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 シャッター



―― 3 ――



 達した後は、夢から醒めたみたいだと、いつも思う。
 写真を撮るために、部屋の灯りをつけていた。裸で息遣いを荒くしている自分が、明るさの中でとても気恥ずかしい。体のすぐ脇にコロンと置かれて、無機質に鈍い光を放つカメラ。さっきまでのあれは何だったんだろう。
 ベッドの上でうつ伏せになりながら、カメラを手に取り、撮った写真をチェックする。思わず苦笑してしまった。最初の3枚以外、感じながら撮った写真は全部、何をどう撮ったのか訳の分からない画像になっていた。お臍のアップに、肩のアップ、太腿だけ、なんてのもある。
 残念ながら、『感じている顔』の写真は一枚も撮れていなかった。プロじゃないんだから、偶然に期待してもやっぱりダメか。ごめんね、秀行。

 シャツをはおりPCに画像を取り込もうとして、ふと悪戯心が湧いた。感じている顔は撮れなかったけど、感じていた証拠があればいいのよね。
 まだ下着をつけていない足の間に、そっと手を伸ばす。イッたばかりで、まだ火照っている部分に指を差し入れる。
「くぅッ……」

『ほーら、みてごらん。こんなに濡らしちゃってる』

 いつも秀行は、私で濡れて光った指を、見せつけるようにする。私が恥ずかしがるのをわかっていて、そうやっていじめる。
 中は何かを待ち受けているように、熱くなっていた。抜いた指を目の前にかざす。
 パシャリ。フラッシュの光に、濡れた指がきらめいた。

『お誕生日おめでとう、秀行。
 あなたにとって、すてきな1年でありますように。

 追伸

 添付の画像は、私からのプレゼント。
 受け取ってくださいね。  

                        裕未』

 画像を2枚挿入して、作業を終える。後姿の裸身と、私の指。いつもより緊張して送信ボタンをクリックし、いつもより長い『メールを送信中』の画面を見つめた。
 メール送ったよって電話をしようとして、やっぱりやめた。今は何て話していいのかわからない。なんだかドキドキする。
 さっきまでの自分を振り切るようにして、バスルームに直行し、熱いシャワーを頭から浴びる。どうかしている。ずっと会えなかったからって、あんなになるなんて。
 ひと心地ついて、部屋に戻る。PCの電源を落とそうとして、新着メールの表示に気づいた。秀行からだった。あれから30分ぐらいしか経っていないのに。

『すごい、凄いよ、裕未。とてもすてきなプレゼントだ。ありがとう!
 裕未のまぁるい白いお尻を見ていたら、すぐにイッちゃったよ。
 2枚目は…いや、説明してくれなくてもよくわかる。湯気が立ちそうだね。
 ホントにありがとう! もう遅いから今日はおやすみ。明日も仕事だろう?
 またゆっくりメールします。良い夢を。

 追伸

 僕も1枚撮ってみました。オナニーする前の光景。
 それではまた。

                     秀行』

 メールの文面から、弾んでいる秀行の声が聞こえてくるみたい。男の人って可愛いなぁ。私で感じてイッてくれた。それだけでとても嬉しい。画面を見ながら、顔が自然とほころんで、蕩けそうになっていく。今まで感じていた恥ずかしさや居心地の悪さが、いっぺんに喜びに変わっていく。
 続けてスクロールして画像を見つける。オナ…する前の光景って……きゃあ!!
 びっくりして、思わずPCの画面を両手で隠してしまった。
 そこに写っていたのは、ちょうど彼自身のモノを握っている、秀行の股間のあたり。もちろん、手で隠れていて、そのものは写っていないのだけど、太腿のあたりとか、周囲の毛とかそういうの、全部写っていて……。とにかく生々しくて、それで……。
 どきどきどき。いちど大人しくなっていた場所が、またじゅわっと濡れ始めてくるのがわかる。ひどいよ、秀行。これで「おやすみ」って言われても。
 今夜はなんだかおかしな夜だ。長い夜になりそうな予感がした。
 
 早く、会いたい、あなたに。



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