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 彼の事情



―― 1 ――



 久しぶりに来た裕未の部屋は、半年近く前とそう変わっていなかった。
 いつものように僕のために準備された灰皿、さりげなく洗面台に立てられた2人分の歯ブラシ、そんな他愛のないものが心を落ち着かせる。
 こうやって誰かの部屋を眺めているのは好きだ。部屋は住人のひととなりを表している。裕未自身が、あんまり女の子らしくないのよと笑うように、花柄やらフリルやらとは無縁の部屋だ。シンプルだが暖かさのある部屋、まるで裕未そのもののように。
 タバコをふかしながら、慌しく過ぎていったこの数ヶ月間を思い返す。少し気持ちがささくれていたかもしれないと。
 そんなとき、裕未の柔らかい肌がふと恋しくなった。
 写真が欲しいと言ったのは、そんな僕の我儘から。この意地悪な申し出に裕未はどう答えるのだろうと、それも密かな楽しみだった。どぎまぎして驚いたり、拒絶したり怒ったりする、いつもと違う裕未の顔を覗いて見たかった。
 僕はあのとき、裕未がほんとうに写真を送ってくれるだなんて、夢にも思っていなかったのだから。
 デジカメを買ったという裕未のメールを読んで一番驚いたのは、言いだしっぺの僕自身だったのかもしれない。思わず有頂天になってしまった僕は、小さなカメラ越しに裕未を立たせて、シャッターを押すごとに一枚ずつ服を脱がせ視姦する、そんな夢想をした。
 あのとき裕未は何を想ってひとりでシャッターを押したのだろう。
 部屋中にコーヒーの香りが漂いだした頃、シャワーを終えて出てくる音がした。
「いい香りー。淹れてくれたんだ、ありがとう」
 上気した頬に濡れた髪、さっきと違う裕未がバスタオルを巻いてそこに立っていた。


 熱いうちにとコーヒーを勧めながら、一緒にテーブルにつく。コーヒーを味わっているように見せて、こっそりと裕未の丸い肩先を、そこから続くなだらかな胸のふくらみを、僕は目で愛撫する。巻いたタオルの先からのぞく膝頭をみて、その上の柔らかい太腿の感触を想像している。
「どうしたの?」
 急に無口になってしまった僕を裕未は訝しんでいる。とはいえ頭の中で欲情しているとも言えず、ただ曖昧に笑うだけ。
 裕未がブルッと肩を震わせ立ち上がった。
「湯冷めしそう。服を着てくる」
 僕の横を通り過ぎる裕未からは、シャンプーのほのかな甘い香りがする。バスタオルを巻いた裕未の姿を、頭の中ではとうに裸にしていた。
「ここへおいで」
 とっさに腕をとらえて、裕未の体を引き寄せる。
「あ」
 驚いて小さくあげた叫び声。でも抗わずに僕の膝に腰掛けて、疑問形の顔で僕を見ている。
「こうしていたら寒くない」
「うん。あ、チクチク」
 少し冷えた肩を抱いて囁く僕に、甘えるように頬をすり寄せる。ずっと前にそんな事をして痛くないのと訊ねたら、伸びかけのヒゲのチクチクする感じが好きなの、と答えた。僕と出会う前に亡くなったという裕未の父親に、小さい頃に頬ずりされた記憶を思い出すのだと。
 不謹慎ながら彼が存命でなくて良かったと胸をなでおろす。少なくとも、もし彼が僕だったら、自分の娘に悪戯を仕掛けるこんな男を許しはしないだろうから。
「きゃ」
 タオルの裾から手を入れて繁みに触れてみる。抗議するように裕未が軽く睨んだが、気づかないふりをして続ける。泉に辿りつこうと指を伸ばしたところで、今度はキュッと裕未の両足に手を挟まれた。
「ダメ」
 そう言いながらも膝の上から降りないのは、もっと甘えたいというサインらしい。ちょっと怒った顔で僕の頬にキスをしてくる。ひとまずは下腹部を責めるのを諦めて僕も裕未の頬にキス。と見せかけて、唇をすべらせて耳たぶを軽く噛む。
「や。その噛み癖、直してよ、秀行」
「噛まれるのはいや? それじゃあ舐めてやる」
 蝸牛みたいな耳の表面をぐるぐると舌でなぞっていく。仕上げには耳の中まで舌先を捻りこむ。耳の穴まで犯す気分で。
「ん、ん……ふぅ……」
 甘い声を漏らして、こわばっていた裕未の背中が柔らかくなった。力を失って僕にしなだれかかる。挟まれていた手も自由になって、膝から太腿にかけてを撫でさする。
「ひどい。あたしが弱いの分かっててするんだから。莫迦」
 裕未の弱点は耳、僕は知っていてそうしている。『ひどい』が『嬉しい』に、『莫迦』は『大好き』に聞こえてしまう。トロンとした瞳で見つめられて、近づいてきた唇を僕は思わず強く吸った。
 唇を吸われて半開きになった口から、切なく溜息のような声が漏らされる。隙間に舌を這入りこませる。口腔内で繰り返される追いかけっこ。舌を押したり引いたり吸ったり吸われたり。でも先に裕未の中に忍び込んだ、僕のほうにちょっとだけ分がある。
 裕未の頭を抱え込んで口を吸いながら、いま一度湿った裂け目に指を侵入させていく。そこには熱い泉が湧き出ていた。ビクッと肩を震わせて唇を離そうとするのを、逃さないように舌で口を犯し続ける。蕩けている場所を指で掻きまわす。
「はぁっ……やだ、いじわる」
 やっと離した唇で裕未は僕を責める。それでも柔らかい襞は指の動きにあわせて、ひくついて絡みついたり離れたりして、絶え間なく蜜を溢れさせていた。
「ほら、すごい」
 濡れた指を引き抜いて裕未の目の前にかざす。とたんに裕未が真っ赤になった。
「ねぇ、裕未。あの時もこんなに濡れてたね。写真を撮って送ってくれたとき」
 言いながら鼻先で指の匂いを嗅いでみせた。指先から立ちのぼる裕未の香り。まるで膝を割り広げ唇を近づけて、蜜を啜っているような気分になる。
「あの時もこんなことをしてたんだ?」
 再びそこを弄んで言葉でいじめる。膨らんだクリトリスを指先で弾くと体が揺れた。裕未がひとりでしている秘め事を、僕はとても知りたい。喘ぎながら俯いてしまった顔を上げさせると、裕未の顔は半ベソをかいている。
「ばかぁ!」
 呟いて大粒の涙がこぼれ落ちた。



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