乙女の祈り
白衣をはおっていつものようにPC向かっている私のそばに、困ったような顔の少女が立っている。
「まったく……何をそんなにモジモジしてるの?」
「だって、ずっとなんだよ。何日も。どうしたらいい? 歩美もうお腹イタくって……」
「繊維質の食べ物とか水分とか、ちゃんととってる?」
「とってるよ! 歩美 好き嫌いナイもん。給食だって全部食べられるよ」
知ってるわよ。大食いの元太クンにはかなわないけど。
「仕方がないわね、ちょっと見せてごらんなさい」
「今日の灰原さん、なんか保健室のセンセイみたいだぁー」
この子と話してると、ときどき頭痛がするのよね。こっそりひとりで呟きながら、
「ハイハイ、じゃぁそこに横になって。診てあげるから」
そばのベッドに寝かせてみる。
ほんのり桃色の頬。「可愛らしい小学生の女の子」が、服着て歩いているようなそんな少女。
いちおう私も同学年のはずなんだけど、これでも。色気より可愛さで比べたら、間違いなく負けてるわね、これじゃ。
そんな勝負、する気にもならないけど。
「ふふっ、これってお医者サンごっこみたいだね、灰原さん」
無邪気に嬉しそうな顔しちゃって。
「今日さ、パパとママの大事な日なんだって。だから帝丹ホテルでごちそうを食べるの。せっかくのお食事会なのに、お腹がパンパンなんだもの」
へえ。結婚記念日ってヤツかしらね。
「その前に、コナン君と一緒に本を探しにいかなくちゃいけなくて。だから時間がナイの」
それは初耳ね。おや? という顔をすると、しまったって感じで、両手で口を塞いでる。
これってなんだか……。
「ナイショだったんだけど……歩美、しゃべっちゃった」
「みんなには黙っててあげるわよ」
微笑みながら、ちょっとチクリとする。
なんか、この子、ちょっと苛めたくなってきた。だってその話をするときだけ頬を染めて、とても可愛くみえる。
江戸川君にとっては本を選びに行くだけでも、この子にとってはデートのつもり、なのね。
「うーーん、やっぱりパンパンね、お腹」
服の上からお腹をさすって、冷たく言う。
放っておいても明日ぐらいには出そうな気がするけど。
「おクスリの必要があるかしら。どうしよう?」
困ったように言ってみる。驚いてまん丸く目を見開いて、ふふ、可愛い。
可愛いから苛めちゃう。
「おクスリ飲んだら、すぐに歩美のお腹、治るのかな?」
「おクスリは、飲むんじゃなくて注射するの。お尻にね」
みるみるうちに瞳に涙がたまってきた。すこし意地悪しすぎたかしらね。
「腕にするような痛い注射じゃないの。でも少し我慢しなきゃいけないかも……」
「少しなら、我慢、できるかもしれない。歩美、がんばってみる!」
そうこなくっちゃ。
「じゃあ服を脱いでくれる?」
あら、なにこの子。恥ずかしがってるの? モジモジしたりなんかして。
「脱いでくれないと、吉田さんのお腹、治せないんだけどね」
溜息ついてみせたら、やっと脱ぎはじめた。まったく手間がかかるったら。
ポロシャツ脱ぐときにおかっぱの髪の毛が揺れて、あらわれた真っ白い肌。ぽちっと桜色の乳首はみるからに美味しそう……。
やだ私、なに考えているのかしら。
最後に残ったクマ柄のショーツをおずおずと下ろして、ベッドの上に両手で胸と下の方を隠すように座った。
隠しても見えちゃったわよ。剥きたてのゆで卵みたいな肌から覗く、乳首と同じ美味しそうな色をした割れ目がね。
「でははじめますから、横になってください」
白衣のポケットに手を入れて、保健室の先生みたいに言うと、
「はぁーい」
素直すぎて危なっかしいわね。誰かにイタズラとかされちゃったら、どうするの。
「注射、しなくても済むように、ちょっと刺激してみるわね?」
そう断って、桜色の乳首にそっと触れてみる。
体がビクってして、先端が可愛くぷっくり膨れてくる。
「怖かったら目をつぶってて。痛くしたりなんかしないから」
「うん……」
細い腕、小さな肩、自分と同じくらいのサイズの体。撫でまわしているうちに、吉田さんを触っているんだか、自分に触れているんだか、どっちだか分からなくなってきた。
優しくやさしく、桜色のつぼみを手の平で転がして、
「うー、ふぅーー。灰原さん、歩美なんだかおかしいよぉ……」
舌先で片方のつぼみをチッチッて弾くようにしたら、びくびく震えてる。
「カラダがね、ふぅ……なんだか熱くなっちゃうの。これ、お腹が治る証拠かなぁ?」
「そうかもしれないわね。ちょっと足を広げてくれる?」
ちょっとだけ開いた足の太腿をそぉっとさすって、可愛い割れ目が覗いたところを、手で包むようにして揉んでみる。
「はぁ、ふぅ……ヘンなかんじ、あついよぉ……」
じゅんっ。しまった、私のほうが濡れてる。
だから私がされたいように、この子にもしてあげる。手で足をもっと大きく広げて、唇を近づけて、壊れものを扱うみたいに、そっと。覗いたピンク色の割れ目を、お尻のほうから前につーーっと舐め上げる。
だって自分にいつもしてるみたいに、この子にハゲシクする訳にもいかないじゃない?
「ひゃあっ! はい、ばらさん、そこ、キタナィ……ふ、ふぅぅーーーっ!」
「我慢するのね。お腹、治すんでしょう?」
生意気に感じてるみたいだから、ますます意地悪な気持ちになって、その先にある小さな宝石を舌先でちょっとつついてみた。
「うん、する、我慢……はぁっ!! なんかヘンだよぉ……」
顔を紅くしてうっとりしてる。
この子ったら……ふと疑問が湧いて聞いてみる。
「ねぇ、こんな風にヘンな気持ちになったこと、前にもあるのかしら?」
「あの、ね。でもナイショなの。ナイショ。だから灰原さんにも言っちゃいけないの」
答えになってないような答えが、頭のどこかに引っかかって、パチッて繋がった。
「それって……もしかして、江戸川君と?」
舌で小さな膨らみ、くにゅくにゅ転がして。
「ふぁっ、ひっ!……ナイショ、なの。おるすばんのことは、ナイショだから……」
語るに落ちるとはこのことね。ふたりでお留守番して、ナイショのことをしたのね。
「ふーーっ。やっぱり注射しないとダメ、みたいね。吉田さん」
顔をあげ、にっこり笑って言ってあげた。
怒ってるのを微笑でごまかすなんて、朝飯前よ。
「え?? やっぱり、お注射、するの?」
「そう。私が作ったクスリなら、排泄する時間帯まで調整可能よ。つまりね、出したい時が指定できるってこと。どうする? 今ここでする? それともお家に帰ってから?」
「…………お家に、帰ってから」
さすがにココでってのは恥ずかしいのね。
「江戸川君との約束の時間は、何時だったかしら?」
「あ!! 五時なんだ。うん、それまでに何とかして欲しいの……」
小学生がそんな時間にデートだなんて、百年早いわよ!
「わかったわ、任せて」
特製のクスリを調合する。冗談ぬきで三十分単位までなら調整可能だ。ヒトに使うのは始めてだけど。五時ね、ふふっ。
悪魔の尻尾みたいなのが、白衣の裾から覗いてないかしら。
「さぁ今度は、うつぶせになってね」
うながすと、使い捨ての浣腸器を見て固まってる。
「痛くしないって言ったわよ。ほら、時間なくなっちゃう」
「……うん、ホントに痛くない、よね?」
「大丈夫、だから」
精一杯やさしく苛めてあげるから、感謝しなさい。
不承不承って感じでうつぶせになって。あら、お尻もすごく可愛いじゃない。ベッドに腰掛けて、柔らかそうなお尻を撫でてみたりして。
「きゃはっ。灰原さん、くすぐったいーー」
そう言っていられるのも今のうちよ。
「えっとねぇ。お尻、もうちょっと持ち上げてくれるかな? 膝を立てるようにして」
可愛いお尻を軽く掴んだり、揉んだりしながら、そう言ってみた。
「こ、こうかな?」
だから素直すぎるってば。そんなに簡単に言うとおりにしたら。また誰かさんにイタズラされちゃうわよ。なーんてね。
「うーん、もうちょっと。そう、そんな感じで。動いちゃダメよ」
肩の前に手をついて、頭も下げるようにして、膝立ててお尻を突き出してる。ピンク色した場所が全部丸見えになって、とてもステキな眺め。
私じゃなくっても、意地悪したくなっちゃうなあ、これじゃ。
さっき舌でなぞった所を、指先でまた触れて。
「ひゃっ、な、なに?」
「痛くないように準備運動だからね。が・ま・ん」
そう言うと唇かんでホントに我慢している。好きなヒトの前で、もよおしたりしないように、必死なんだわ、この子。
唾液で濡れてる宝石を、もう一度いじって。
「ココもね、注射する場所だから。もうちょっとだけ頑張って」
声かけながら、指先で軽く可愛い窄まりを押してみる。
「ふぁっ!!」
潤滑剤代わりにくるくると優しく皺を舐めて、ほぉら、怖くないでしょ。気持ちよくなるように、宝石も一緒に弄りながら、尖らせた舌をちょっとだけ入れてみる。
「ふぁぁぁあっ!! ヘン、ヘンになっちゃうよぉぉ……」
ヘンになったままでいてね。痛くないから。
つぷって浣腸器の先を沈めた。
どんなに準備運動をしても、さすがに異物感があったらしい。体が大きく震えたから、動かないように腕で細い腰をぐっと抱えた。
そのまま液を注入していく。
「うぅーーーっ!! きゃ、いやぁ……お腹、ヘンだよぉ……ひっ!」
「はい、おしまい。よく頑張ったわね、えらい」
浣腸器を抜いて褒めてあげると、なんだか物足りないような顔をした。
まさかと思うけど、ちょっと感じていたのかもしれない、この子。
「あ……うん、ありがとう、灰原さん」
顔を火照らせながらそう言って。
やっぱり可愛いな。苛めたことをほんのちょっとだけ後悔した。
「さあ急がないと。お腹、もう大丈夫でしょう?」
「ホントだ。さっきちょっとヘンだったけど、今は、うん、だいじょうぶ!」
そそくさと服を着る。
江戸川君とのデートと、家族でのお食事会にそなえて、きっとおめかしするんだろうな。
「じゃあ、出かける前に、ね。がんばって」
「うん、またね。灰原さん!」
可愛いワンピースが汚れたりしないように、心からお祈りしてるわ。
スキップしそうな後姿に、そう語りかけた。
毛利探偵事務所の近くの信号のところで、女の子がひとりうずくまっていた。
どうしよう、どうしよう……あああ。
約束の時間に遅れちゃう。走ると余計におかしくなっちゃうし。お家にいたときは大丈夫だったのに。ギリギリの時間まで、がんばったのに。
なぁんだ、灰原さんのおクスリ効かないんだって思って、出かけてきたんだけど。
うん、決めた。コナン君ちに着いたらおトイレ借りよう。すぐに。
とっても恥ずかしいけど。やだ、暑くないのに、オデコに汗かいちゃった。さっき阿笠博士のお家にいたときも、すごくヘンな感じだったけど、今はもっとヘン。
時々お腹がキュウってなって、ああ、やっと着いた。
「あら、いらっしゃい、歩美ちゃん。コナン君ね、ちょっとコンビニに行ってるのよ。少し待っててくれるかな」
「あ、あの……お、おトイレ借してくださいっ!!」
わ、大きな声出しちゃった。コナン君いなくて良かった、ホントに。蘭おねーちゃんの返事も聞かないうちに、靴脱ぎ捨ててズカズカ入っていった。
だって、ほんとにもう、時間がナイんだもん。
「あ、今お父さんが入ってるんだけど。大丈夫? 歩美ちゃん」
……うそ……トイレの前でへたりこんじゃう。
おじさん、早く出て。それからコナン君、今は帰ってこないで。ぜったいに!!
「おじさん、おじさん、お願い。早く出て、おねがいだからぁ……」
ドンドンドン。ドアを叩いても返事がない。おじさん、トイレで寝てるのかしら。
もう歩美、ぜったいぜつめいだよ。
「お父さん!!! いつまで入ってるの!」
頭の上で蘭おねーちゃんの大きな声がして。
でも、もうダメかも。泣いちゃいそう。
お腹がきゅーーーってなって、歩美 大好きなヒトのおうちで…………。
こんなの悲しすぎ。
「あーーっ、うっせーな。なんだよ」
頭ポリポリ掻きながら、新聞持っておじさんが出てきた。突き飛ばすみたいにして中に入った。
* * * * * * * *
よかった、ホントに良かった。…………間に合った。出すときにすごい音がしちゃったけど、聞かれたのはきっとおじさんだけだから、いいや。
ホッとしたらなんか涙が出てきちゃった。
そうだ、明日 灰原さんに会ったら、あのおクスリ時間通りに効かなかったよって言っておかなくちゃ。
すっきりして手を洗って出てきたら、ちょうどコナン君、帰ってきた。
「よぉ、来てたのか」
「うん!!」
今日はこれから楽しい事がいっぱいあるんだ。
――[乙女の祈り]fin. [哀の受難] に続くNext Novels-ss
作中の「おるすばん」は、コナンで想像しよう!の「おるすばん@マターリ」をどうぞ。