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 哀の受難



 翌朝なんだかご機嫌な様子の吉田さんと、いつも通りの江戸川君を教室で見つけて、どうやら私の目論見は、失敗したらしい事を知った。
 フッ……つまらないわね。
 黙って授業を受けているのは、相変わらずタイクツでたまらないけど、いまの私にはそれよりもっと困った問題があった。それは……。


「あーーっ、もう、ホントにやってらんない!!」
 イライラしたまま家路について、ランドセルを放りだしてベッドに横になる。
 疼いてる。昨日あのハナシをきいてからずっと。

 ――ナイショ、なの。おるすばんのことは、ナイショだから……

 昨日からあの言葉が耳について離れない。
 ずるい、ズルイ。あの子達ふたりだけで、そんなのズルすぎる。
 どんどん妄想が膨らんでくる。昨夜は阿笠博士が新しい発明をしたとか言って、ゆっくり一人の時間が取れなかったし。だから、だから朝からずっとヘンだったわ、私のカラダ。
 面白くもない「フツーの小学生」役も終わって、やっと一人になれた。
 特別長かった、今日の一日は。
 疼いたままほっとくと後がタイヘンなのよ。体育で着替えようと思ったら、服がこすれる度にビクビクするし、トイレに入っただけでヘンな気分になるし。これは早く処理しておかないとね。

 まったく鬱陶しいったら。溜息ついて起き上がる。そういえば胸に触れても、感じてはいたけど驚いてはいなかったわね、あの子。
 着ているTシャツたくし上げて、下着の上から触る。
 ふぅ。もうとっくに固くなっててビクビクする、あぁ。
 じれったい。服も脱いでしまおう。今日は誰もいないんだから。
 指先で固くなった乳首をコリコリと摘まむ。そう、この感触よ。ずっと欲しかったのは。
 はぁ、堪らないなぁ……普段は忘れているのに、この悪い習慣。
 刺激を受けてしまったから、あの子のせいよ。
 ナイショってどんな事をしたの? 江戸川君……コナン君?
 ヘンな気持ちになるわよね、こんなとこ触ったら。
 ココもこんなに膨らんでる……んんッ! もどかしいのはこの後よ。オトナのカラダの時のようにいかないんだから。ゆっくり捏ねて、あぁ、いい感じ……。
 ちょっとずつ上っていく。体の芯が溶けて、何もかも忘れられるひととき。


「そっか。灰原さんは自分でしちゃうんだね」
 …………??? だれ? なに? とっさには意識が戻らない。
 !!! わ! なんでこの子がココにいるのよ??!
「よ、吉田さん?? どうしてここに?」
 それよりハダカでこんなコトしてるこの状況を、どうやって説明したら……。
「ずっと声かけようと思ってたんだけど、灰原さん、大急ぎで家に帰るんだもん。歩美追いかけてきたんだ。気づかなかった?」

「いっしょなんだ、困ってるんだね。だったらお手伝いしてあげる!」
 え? えぇっ? 
「灰原さんもお腹がパンパンなんでしょう? その気持ちわかるもん」
 それは激しく勘違いをしているような……。もしくは幸運と言うべきか。
「いや、大丈夫だから、ひとりで……ねっ?」
「昨日やってもらったから、わかるもん」
 な、何がわかるって言うのよ……あうっ!
 頭の芯まで痺れる……クラクラする。楽しそうにベッドに飛び乗ってきたこの子の膝が、股間を直撃した。敏感なところを上からぐりっと……。
 じょ、冗談じゃな……ダメだわ、体に力が入らない。
「やっぱり苦しいんだ。すぐね、すぐにヘンな気持ちにしてあげるから」
 ち、ちが……違うって。
「そうじゃなくて……ぁふっ!」
 小さな指先で乳首がくりくりと……あぁあ……。自分の指じゃないってなんて気持ちイイんだろう。勘違いのまま蕩けてもいいかもしれない……体がふわふわする。
「それからたしかココ、だったよね? ふふっ、ヘンな気持ちになってきた?」
 この無邪気さがときどき怖くなる……はぁ、でも気持ちよすぎ。たどたどしい指であちこち弄られたり摘まれたりして、これはもう……。久しぶりの刺激で力を失った私の体は、あえなくベッドに突っ伏した。火照った場所を前後に擦られて、膨らみをぐりぐりされて、気が遠くなる。
 あぁ、そんなところも触って……気持ちイイ……。


 つぷり……。
 今までと違う刺戟で頭に火花が散った。冷たいモノが体内に侵入する。
 そ、そんな……わわっ、これは!
「がんばってね、が・ま・ん」
 うそ、いつの間にそんなモノを……ぅわぁああ。
 腸内を這いまわる流れ。逃げ出そうとしたけど、私の腰はがっちりホールドされていた。
「はい、オシマイ。よくできました」
 言いながら頭を撫でられて、私は自分のしたコトを心底後悔し……ている暇もない。ぎゅるぎゅるとお腹が絞り上げられる。くぅぅーーっ!
「あの、ね、その、そこにあるクスリ、全部、入れたの? ぁくっ……」
「うん、きのう歩美にしてくれたのはコレだよね?!」
 にっこり笑う顔を見ながら、襲ってくる激痛に耐えていた。
 その試薬ぜんぶって……それって、直行便じゃない!
 壁に何度もぶち当たりながら、よろよろとトイレに辿りついた。


   *  *  *  *  *  *  *  *


 はぁ、はぁ…………な、情けない……。

「すごいね、あっという間に効いちゃったね、おクスリ」
 当たり前じゃない。私が作った特製なんだから。
 出てきた私を見ながら事も無げにいうこの子に、ほんのちょっとだけ殺意を覚えた。



前回の教訓; 食べ物は好き嫌いなく、野菜もキチンと食べましょう。
「給食は全部食べるけど、おうちでは時々残しちゃうんだ」歩美ちゃん談。

今回の教訓; 「人を呪わば穴ふたつって事かしらね……」哀ちゃん談。




Back ――― fin.




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