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 被虐



 仕事の手を休め、視線をキーボードに落として自分の手を見つめる。右手を持ち上げ吸い寄せられるように、手首にキスをする。もう跡も何も残っていない。もっときつく縛ってもらえば良かった。そうしたらその刻印を見て、ずっとあの日の事が忘れずにいられるのに。
 私の記憶は少し前に遡る。熱い夜はこの場所から始まった。



「いつまで仕事してるんだ?そろそろ終わりにしないか?」
「もう、終わりにする。……あ……」
 男が後ろから抱きすくめた。
 少しドキドキする。数日前に私は、縛って欲しいと寝物語にお願いしていたから。
本気で受け止めてくれただろうか。ずっと昔、この男とつきあい始めた頃に、軽く手首を縛られてセックスした事がある。手をバンザイみたいに上げさせられて、押さえつけられた。その時は感じても動けなくて、とてもイヤだった。
 なのにどうしてお願いなんかしちゃったんだろう。

 男の指が通い慣れたようにTシャツに中にもぐり乳首を弄ぶ。
「んっ……」
「もう感じてるの?」
 囁いて耳を舐める。吐息を吹きかける。ふわりと頭に靄がかかっていく。
「ダメだったら……」
 今度はシャツの上からなぞる様に乳首をいたぶる。
「声が大きいぞ。窓の外に聞こえるから、黙って」
「あ……でも、声出ちゃう」
 愛撫の手は止まらない。
「静かになるように、口にタオル噛ませてやろうか?」
 男の口調が少しずつ変わる。声が出ないように、唇を噛みしめて耐える。
「んんっ……」
 手は柔らかな下腹部にまで伸びてくる。
「ここでしたい?」
 椅子の上で、私は座ったまま弄ばれている。
 寝室に行かずに、ここでされたい。椅子の上でレイプの様に貫かれたい。
 喘ぎながら小さく頷く。

 ジーンズをはぎとられ、手が太腿の付け根をなぞっていく。
「こんな所でしたいなんて、ほんとに淫乱だ。スケベだな、お前」
 焦らすように秘所のまわりを触る。足はいつの間にか大きく開かされている。男はあぐらをかき、椅子の前の床に腰を下ろす。私の足の間を見上げながら命じる。
「もっと足をあげて」
 その言葉に誘われるように、左足を大きく持ち上げてサイドテーブルにのせる。本当は恥ずかしいはずなのに、大胆になっている自分に気づく。
「や……恥ずかしい……」
「いい眺めだ。あそこはどうなってる?」
「どうなっているか……みて……」
「見て欲しいのか」
「は……い」
 下着の上から割れ目にそって指が走る。それだけでじっとしていられない。
「もうトロトロなんじゃない?」
「いや……言ったら……」
 どんな状態なのか、言われなくてもわかっている。だが男に言われることによって、羞恥が増す。もっと、もっと触れて……。指に押し付けるように腰が動いて前へせり出す。
 男は急に立ち上がり、自分の膝を私の股間に押し当てた。
「ああんッ!」
 下着の上からクリトリスを強く刺激され、我慢できなくなって男の体にしがみつく。
「脱げよ。足を開いて全部見せろ」
 いつもなら抗えるはずだ。でも今はできない。それは私が求めているからだ。下着を取り、シャツを脱ぎ、もう一度椅子に座り直して足をゆっくりと広げる。まるで機械じかけの人形のようだ。どこで魔法にかかってしまったのか。
「そう……よく見えるよ……」
 男の顔が秘所を覗きこみ、一番 敏感な部分に舌を伸ばした。もうクリトリスは触れられなくても固くなっていた。

 ツ……ツン。
 ほんのひと触れで体がビクッと反応する。それから痛いほど強く吸われる。
「ん……ああっ!」
 声を抑えていられない。早く触れて。もう溢れて洪水のようになっているから。焦らすように唇が離され、鼻先から唇の先で割れ目をすうっとなぞる。口髭のチクチクする感触。
 我慢できずに思わず言ってしまう。
「さわって……」
「何がしたい? 聞こえないよ」
 男の声が含み笑いになる。
「あぁ……さわって、確かめて……ねぇ、おねがい……」
 哀願の声になる。すすり泣いてしまいそうだ。疼きがとまらない。
「すごい……溢れてるよ。どうしてこんなに濡れちゃうの?」
 くちゅくちゅ。指が溢れでる入り口を悪戯して小さく動く。せつない。
「んんっ……やっ!」
「腰が動いてるぞ」
 会陰まで流れ出した液を、指がすくってアヌスに塗りつける。
 ぬるり。アヌスが刺激される。こんな風にして昔、私はこの男にアヌスまで開発されたのだ。背筋にゾクっと快感が走る。でもいたぶる様に指は移動する。
 今度は膣の奥に向けてぐいっと入ってくる。指の腹を上に向けて押しつけるように、親指が内部の感じるところを探りあてる。
「あ……んふっ! だめ……そんなにしたら……もう……」
「もう、何?」
 こみあげてくる快感の波に揉まれて、何も答えられない。私は男の肩を鷲づかみにし、絶頂をむかえていた。

 うねるような荒波が体から去っていく。私はゆっくりと吐息をついた。
「向こうの部屋へ行くか?」
 男が訊ねる。
「うん……」
 痺れるような余韻を引きずりながら答えた。私はまだ男のペニスに触れてもいない。
「おいで」
 裸のままついていった。少し夢を見ているようで、現実感がない。足元がふわりと浮いた感じがする。頭の中ではおかしな夢想が広がっていた。これから私を縛ってくれるのだろうかと。奇妙な興奮と期待が、気持ちの中に渦巻いていた。
 テーブルの前まで来て男は椅子に座り、勃起したものを私に見せつけるようにして命じた。
「これを、元気にしろよ」
 床に跪き、魅入られたようにペニスを見つめている。体の芯が疼きはじめる。
 男のものに唇を寄せた。亀頭に愛おしむように口づけ、頂上の裂け目を悪戯する。横笛を吹くように、唇が棹の根元へ移動して、舌でゆっくりと舐め上げる。
 きっと今、私は蕩けるような顔をしてるに違いない。棹を上下にしごき、柔らかな袋を愛撫しながら、男のものを口に含む。
「いれたいか?」
「いれ……たい……」
「乗ってこいよ。後ろ向きだ」
 そういうとそのままの姿勢で、そそり立つものを突き出すようにする。男に背をむけ膝を跨ぐようにして、私は腰をおろした。熱い塊りに手をあてがいながら、ゆるやかに腰を沈めていく。
「あ……あぁぁ……」
「熱いな。中が、すごく熱い」
 椅子の肘掛けをつかんで、喘ぎながら私の身体が上下に揺れる。

 カラン。ひどく涼やかな音がした。
 男がテーブルに手を伸ばして、飲み残した水割りのグラスを手に取った。
「立って」
「えっ?」
「テーブルに手を付くんだ」
 何をしようというの?
 繋がっていた体を離して、命じられた姿勢をとる。男はグラスの中から氷をひとかけら
つまみ出した。
「きっと冷たいよ」
 含み笑いをしながら男が呟く。
「や、ん……あ……」
 つるりと冷たい氷が、熱く沸き立つ中に押し込まれた。内部の熱が少し鎮まっていく。
「どう?」
 訊ねながら男のものが後ろから入ってきた。氷のせいでいつもは突き当たる奥まで届かない。中に冷たい感触がある。だがそれも熱を帯び、だんだんと溶けていく。
 またもう一つ、グラスから氷をつまみ出す。今度はアヌスへ。
「んんっ……」
 こっちの方がもっとおかしくなる。悪寒に近いものが背筋を這う。溶け出した水が太腿を伝う。男は片手でグラスに残った水をすくって、私のお尻にぬり始めた。
「いやだ、冷たい。床がびしょびしょに……まるでお漏らししたみたい」
 そういって振りむくと、男の眼は急に熱をおびたように見えた。耳元で囁く。
「見せてくれないか? お前がおしっこをするところ」
「え?」
 私はこの男とつきあい始めた頃のことを思い出していた。そう、あの時もこんな風に言われた。おしっこをする所をみせてくれと。その時は、そんなのやだよ、と笑って答えた記憶がある。
 男の口調が少し変わった。少し甘える声になっている。
「ねえ、見せて」
「え、どこで……?」
「風呂場に行こう」
 私には少し変わった性癖がある。おしっこを我慢すると、とても感じてしまうのだ。トイレに入って放尿する瞬間に感じて、イってしまうこともある。そんな話をこの男にしたら、なんて答えるだろう。
「いいよ。でも出ないかもしれない」

 浴槽の縁に腰掛け、伸ばした足をゆっくりと開く。やっぱり恥ずかしい。男はしゃがみこんで、少年のような眼をしながら私の足の間を眺めている。
「見たいなあ」
 割れ目を指で開くようにして、覗きこむ。そんなに顔を近づけたら、放尿する時にかかってしまう。
「ここだよね、出てくるの」
 男の指が尿道口を刺激する。いや。何でこんな事してるんだろう。恥ずかしくて顔をそむける。体が熱を帯びたように震える。
「だめ。出ないよ、やっぱり」
 男はあきらめたように立ち上がると
「じゃあ今度、絶対に見せて」
 そう言って抱き締めながらキスをした。羞恥と安堵の狭間で私はあいまいに頷いた。

 浴室を出て、私達は寝室に入っていった。私は一度達していたが、男はまだ射精もしていない。
「どんな風にされたい?」
 男は何だか上機嫌だった。私は迷わず答えた。
「ねぇ、このあいだ言ったみたいに……縛って……」
「ほんとに縛られたいのか?」
 男の声がまた変わった。
「うん……縛って」
 頭の中に次第に膜が降りはじめる。私の中で何かが変わっていく。

 男はタンスを開けると、私の黒いタイツを取り出した。
「ここを、こうして……」
 男は、仰向けで寝ている私の左肘と左膝を、手際よく縛っていく。
「それから、こう」
 今度は右肘と右膝が一緒に拘束される。どうしても開脚姿勢になってしまう。たとえ足を閉じても、男のほうからは秘所が丸見えだ。こんな恥ずかしい姿勢は想像していなかった。私が望んでいたのは、後ろで手首を拘束されるとか、そういったものだった。与えられた辱めに呆然としたが、不思議と恐ろしさはなかった。
「いや、はずかしい……このままじゃ……」
「縛られたいと言ったのはお前だろう?」
「……はい……」
 その後、手首には白いロープ状の紐が巻かれる。
「ほら、これでどうだ?」
 足をM字に開脚されたまま、肘を張った状態で手首が拘束される。屈辱的な姿勢に、体が震える。もう男がどんな顔で私を見ているのか正視できない。
「んん……ん……」
 恥ずかしいのになぜか興奮している。不思議な感覚。
「痛くないか?」
「いたく……ない……」
 男は急に私の唇を吸った。
「もっと舌を入れて」
 頭が痺れる。互いの舌を絡めてむさぼり合う。
「こんなのが好きか。こんな風にされるのが好きなんだな?」
 男の声が熱を帯びている。こんな恥ずかしい姿の私を見て、この男は間違いなく興奮しているのだ。
 肩先がまた震える。嬉しい。
「こんな格好のまま、動けないし解けない。どうだ?
 どんな事をされても文句は言えないぞ。お前がしたいと言ったんだから」
 丸見えの秘所を好きなだけ指で弄ばれながら、少しずつ意識が薄れていくような気がする。少し手首に紐が食いこむ。痛い。痛いけれど、それはやがて快感に変わっていく。
 どこかへゆっくりと堕ちていく。私はだんだんと喘ぎだしていた。


 バシン! バシッ、バシンッ!

 その瞬間 何が起きたのかよく分からなかった。体に衝撃が走る。
「あうッ……!!!」
「痛いか?」
 話には聞いた事がある。これはスパンキングだ。私は男の手の平で、お尻や太腿を叩かれていた。
「ぁうん……」
「そうか。こういうのも好きなんだな、お前は」
 バシン!
 今度はもっと強く叩かれる。苦痛が快感に変わって頭の芯が痺れたようになる。
「どうなんだ? 答えろ!」
「ああッ……!」
 また男が強く唇を吸った。視線が絡み合った時、その顔は間違いなく上気していた。今、私はどんな顔を見せているのか。羞恥の表情か、苦痛の表情か、それとも……。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
 両方の乳房が強く掴まれ、ひねり上げるようにされる。強い力でその形が変わって
しまうほどに。
「ああぁ…………」
「お前はそういう女なんだ。淫乱でスケベで、こんな事をされて歓ぶ女なんだ」
 男が耳元で囁きながら、私の髪の毛をまさぐる。とても愛しげに。
 歓喜に震えながら、私は深く貫かれていた。男のピストンを受け入れながら、夢見る
ような気持ちになって呟いた。
「わたし、あなたに……見せてもいい。おしっこをするところ……」
「今度、必ず見てやるから」
「はい……」
 貫かれている体の快感よりも、自分のすべてを見せて、受け入れられた心の快感の方が強い。脱ぎ捨てられた古い衣。私はいま、違う自分に生まれ変わった。
 男は激しく抽送すると、私の腹の上に射精した。皮膚が男の放った体液の温かさに染まっていく。それを汚いものでなく、とても愛しいものと感じていた。



 あれからほんの4日しか経っていない。
 なのにまた、あの快感と歓喜の気持ちが欲しくなる。男にいつものように胸を弄られながら、私はそう考えていた。

「胸をいじるとスイッチがはいっちゃうんだよなあ。もう濡れてる?」
 少し微笑みながら男が訊ねる。ふうっと頭にまた膜が降りるのを感じながら、小さく頷いた。
 この前のセックスは衝撃的だった。まさかあんな風に縛られて、スパンクされるとは思ってもみなかった。今度は普通に優しく愛してほしい。

 男はダイニングの椅子に座っている。私は立ったまま向かい合って、抱きかかえられるように、着衣のまま愛撫されている。素肌にTシャツ、その上から軽く触れるか触れないかのタッチ。そしてときどき乳首が強く弾かれる。立っていられなくなる。椅子の肘掛けに手をついて、男に覆いかぶさる。
 男の手が移動する。ぴったりした部屋着の上から下腹部をなぞられて、私は喘ぎ続けていた。
「んんっ……だめ……」
「何がだめ? 感じているんでしょう?」
 好きなように弄ばれて、すぐに蕩けてしまう。何故こんなになってしまうんだろう。快感と同時に、髪の毛がふわりと揺れる。椅子がきしむ。男の手でするりと服がぬがされてゆく。
 下着のすきまから指が入ってくる。
「ほら、溢れてる」
「ああっ……!」
 クリトリスを弄られながら、声を抑えきれなくなる。執拗になぶり続けている。
 膝がガクガクする。椅子をつかんでいる手に力が入る。男の膝の上で足を開いて、とても恥ずかしい姿勢だ。私の雫で滑らかにすべる指の動きに合わせるように、腰は小刻みに律動して、足はもう爪先立ちになっている。
 だめ、達してしまう……。
「やめて!」
 叫んで崩れおち、男の目の前でへたりこんだ。

 荒くなった呼吸を整えながら、私は男を見上げる。優越感に浸っている男の顔を。男はニヤリと笑って、ズボンを脱ぎペニスを取り出す。
「バックが好きなんだよな」
 男の腕で体を支えられながら、私はゆっくりと立ち上がる。すでに逞しくなっている男のモノをぼんやりと見つめる。

 欲しい。

 無言のまま下着を取り去ると、まだクリトリスへの快感の余波で、ゆらゆらする体を椅子で支えながら、私は男に背を向けた。
「んあっ……」
 いきなりなんの前触れもなく、男のモノが侵入してくる。今日は興奮しているのだろうか。ストロークが早い。性急に奥まで突かれ、ギリギリまで抜かれ、そしてまた貫かれる。そんなに激しく突かれたら壊れてしまう。
 男は私の腰を掴み、自分に引き付けるようにする。
「いや……だめぇ!!」
 体奥を突かれている辛さから自然と前に逃げるように、私は椅子の上に乗って膝をついた。
「抜けちゃうよ。ほら……欲しくないの? もうお尻の方までグチョグチョだけど」
 もうこれ以上逃げられない。男のペニスを再び体の芯に受け入れながら、私は自分の秘部が奏でるいやらしい音を聞いている。
 男から逃れようとして、かえって丸見えの、恥ずかしい姿勢を取らされている。
 椅子の座面に四つん這いの様に膝をつき、椅子の背を掴んで体を支える。私はいま一匹の獣のような姿を男の前に晒している。顔は男のほうを向いていないのに、自分がどんな姿で男の眼に写っているのか、突かれながらそんな想像をしている。
「いや……苦しい……やめて……」
 うわ言の様に呟きながら、男の深い動きと共に、私の胸が椅子の背に擦り付けられる。乳首が冷たい椅子の背にあたる。それも心地よい刺激となって敏感に反応する。
「もう許して……ダメなの、こわれちゃう……ああん……」
 背中がのけぞり椅子がぐらりと揺れる。男は急に動きを止めて、焦らすようにペニスをするりと抜いた。
「どうしたい? 向こうに行くか?」
「あ……うん……」
 クラクラする頭の中で、何も考えられずに私は頷く。寝室に誘われている。まだ続きがあるのだ。

 男はベッドに横たわり屹立したモノを見せつけながら言う。
「のってこいよ」
 さっきもう充分だと思ったはずだ。でもすぐに欲しくなる。
 私は男の上に跨った。
「どうした。いれないのか?」
 私は少し躊躇している。
 でももう充分に疼きはじめている。手を添えて切っ先で割れ目を擦るようにする。
 溶ける……このままもっと感じていたい。
「……ん……はうっ」
 男が腰を突き上げた。濡れそぼった場所にペニスが侵入してくる。
「だめ……またよくなる……変になっちゃう……」
 男のモノを味わい尽くすように、ゆっくりと腰を動かし始める。感じてしまって、体を起こしていられない。体を前倒しにして、男の顔の両脇に両手をつく。一番感じる部分を擦るようにして、ちょっとずつ体が揺れる。
「それが好きなんだな。気持ちいい?」
「……ああ……すごくイイ……いいの、たまらない……」
 浅い波にさらわれていく。頭の芯が痺れる。びくっと体が反応して私は軽い絶頂を迎えた。 余韻に痺れている体に、男のモノはまだ動きを止めない。
「あ……だめ。また、よくなっちゃう。うごいちゃ……んんっ……!」
「いくらでも良くなるんだな。果てしがない」
 蕩けきっている私の体を、男はグイっと押し戻すようにして、立てて起こした。
「だめよ……深くて、苦しい……」
 膣口から頭のてっぺんまで繋がったような快感が走る。男は私の両手を握りぐっと押すと、より深く下から貫ける体勢をとった。
「だめなの……いやあっ!!」
 ひときわ大きな声を上げて、内腿を震わせながら、私は二度目の絶頂を迎えた。

 ゆっくりと横に体を倒す。しどけない姿。
「もういっぺん、乗って来いよ」
「むりよ、もう。まだ痺れてる」
「しょうがないヤツだな。今度はどうされたい?」
 なんと答えよう。知らぬ間に、私はこう言っていた。
「また縛って。この前みたいに……」
 男は意外そうな表情になる。言ってしまった。顔から火がでそうで思わず横を向く。
「そうか……。縛られるのがそんなに好きか」
 いつもの焦らすような、悪戯するような表情でなく、わずかに熱をおびたような眼で私を見つめる。男は私からTシャツを脱がすと、それで縛りはじめた。
「じゃあ、今日はこうだ」
 何をされているのか、見ることができない。また恥ずかしい格好をさせられているんだ。
 私の右腕を取り、左足を大きく持ち上げる。絶頂の余韻で痺れているアソコが露わになる。右肘と左膝がシャツで結ばれる。少しきつい。
「これでどうだ?」
 今度は私の左手首を掴んで、右肩の向こうに押さえつけた。交差している腕のせいで、乳房がぎゅっと中央に寄せられて隆起する。
「……あ」
「こんなのが好きなんだ。お前はほんとにマゾヒストだな」
 縛られているだけで、拘束されているだけで、感じはじめている私の顔を見つめながら、男はそう囁いた。縛られて、すっかり露わになった秘所を男の指がまさぐる。
「ん……だめ……」
 膣口をもてあそびながら、指は上へ移動していく。
「どうだ? おしっこをしたくならないか?」
「あ……や……でない………」
「そうか。したくなったら言え。ゆっくり見てやるから」
「……はい……」

 パシンッ! パシッ、パシンッ。

 スパンクが始まった。今日はこの前よりすこし強く。
「んんっ……ああ……!!」
 頭の中にずうーーんとする痛みと快感が走る。
 ああこれだ。男の興奮も高まっていく。これがされたかった。
 男は強い力で、私の腰をそれから二の腕を叩き続ける。
 痛い、痺れる。でも快感に変わっていく。
「あう……んッ……」
「こんなにされるのが好きか、この淫乱」
 そう言いながら、男の猛々しいものが入ってくる。
「……はうッ……」
「こんなのが好きなんだ。変態だな、お前」
 ぎゅいっと乳房が掴まれる。痛い。
「あああ……んんんんッ……」
 中をこねくり回されながら、尋常ではない興奮に体が熱くなっていく。
「お前は変態で、淫乱な女だ」
 よりひどい言葉で、罵倒されればされるほど、私の体は歓喜に打ち震える。
 胸をつかむ指に力が込められる。肩先を軽く噛まれながら、乳首を強く捻るほどに摘み上げられる。
「くうぅ……ん。あぁ……はあぁんっ……」
 いつもと違う声が出る。
 ほんとうに頭がおかしくなってしまう。まるで犯されているような、激しい交わり。自分の体に何がされているのか、全身が痺れたようになってもう何もわからない。
 男は激しい律動と共に、私の太腿の上に白濁液を流して、崩れ落ちた。



Next [羞恥]へ続く




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