Tears ――3



「ったく、スケベな女だな、お前」
 ピアス野郎がニヤニヤ笑う。恩田がゆっくりと唇を離す。霞がかかってるみたいなトロンとした瞳は、どう見ても委員長らしくなくて、実はそっくりな双子の片割れなんじゃ? とか、本気で考えた。
「立てよ。イキたいんだろ?」
 言われるがままに立ち上がる恩田の姿に、俺は興奮して、それから何故だかすごく悔しくて。
「でも……」
 モジモジ恥ずかしがってる委員長が、とても新鮮だ。
「誰も来ねーって。ホラ、脱げよ」
 偉そうなピアス野郎には、ますますムカつくけれど。
 ゆっくり立ち上がり、不安げに周囲を見回した後、恩田はスカートの裾に手をかけた。スカートがめくれる。たくしあげられる。水色が見えて、白くて丸い尻もちらっと見えて、ちっちゃな布キレが足から順番に抜かれる。
 委員長の頬は紅潮して、なのに怒ったような顔をしていた。
 息が詰まる。呼吸するのを忘れそうだったので、ゆっくり息を吐いて再開した。
 後ろ手にパンツを握り締め、潤んだ目をした委員長を、たぶん俺はずっと忘れない。
 男が手を伸ばすと、恩田は縋るようにその胸に飛びこんだ。
 こいつら、これからヤっちゃうんだ。俺は見てるだけ。オカズにしてチンコしごくだけ。
 また息が詰まった。胸の上に重石が乗っかってるみたいだ。それでも二人から目が離せなくて。
 ピアス野郎はスカートに手を突っ込んで、委員長の尻を撫でていた。男の首にしがみついてる、恩田の顔は見えない。でも肩が揺れていた。
「はぁんっ! ヤ……だ、ちゃんと……シてよぅ……」
 ヤらしい声。甘いおねだり。聞いてると、頭の芯がくわっと熱くなる。
 まだセックスしていない。でもスカートの中で、男の手が動いていた。やっぱりマンコ弄ってる?
「ワガママ言うな。三十分後に駅前だぞ」
「や……。あた……し、コウ以外の人とシたくな……いって、ぁんっ!」
「頼むよ……なぁ」
 言い争いなのか、痴話喧嘩なのか。交わされてる会話の内容は、よくわからないけど、今にも始まりそうな二人のエロさに、釘付けになっていた。
 男の頭が沈む。キャミソールを捲りあげる。当然そこはノーブラで。
 揉みがいのありそうな、プルッとしたオッパイが覗いた。ごくっと唾を飲んでしまって、今のが気づかれやしないかと、心臓がバクバクする。
 でも奴らに、そんな心配は無用だった。サカリのついた犬猫みたいな男と女には、周りで何が起きていようが関係ないのだ。
「やっ、はっ……うぅん……ちゃん、と……シてって」
「時間ねぇんだよ。我慢しろ」
 ちゅぷっと柔らかいモノに吸いつく音がした。白桃のようなつるっとしたオッパイに、男の唇が張りついている。大の男が屈んでオッパイにしゃぶり付いてるのは、あまりカッコいいもんじゃない。なのに、むちゃくちゃ羨ましく見えるのは、どうしてだ。
 ピアス野郎の頭を両手で抱えながら、委員長の体がゆらゆら揺れる。その唇からは、意味をなさない言葉しか出なくなってて。エロ声ってより、啜り泣きみたいな。
 男の舌が、ペロンと乳首を弾いて、離れる。オッパイがプルンって揺れて、小さなグミみたいな乳首がツンと上向いて、委員長のカラダ、いやらしすぎ。
「あぁん……」
 名残惜しそうな恩田の声は、俺には「もっと」って言ってるみたいに聞こえた。
「おまえ、濡れすぎ」
 ヘラヘラしながら、スカートの中でせわしく手を動かしながら、男が言った。
 恩田は男の肩に手をかけ、唇半開きにして、しがみついている。
 はぁ。女がキモチよくなってる時って、こういう顔になるんだ。トローンとした委員長の瞳を見ながら、感心する。おまけに、すげーチンコにクル。直撃で。
 耳元で、男が何か囁いた。
「ヤだったら……あたし、いか……な……」
 呂律がアヤシくなってる委員長。全然らしくないんだけど、かえってたまんねーっつうか。
「指、増やすぞ」
 指マン、してるんだ。ぐちょぐちょマンコに指、突っ込まれて。それも何本も。
 エロ動画で見るようなヤらしい絵が、頭にくっきり浮かんだ。恩田のスカートの中、しっかり想像しちまった。
「やんっ、キツっ……」
「だーいじょーぶ、呑みこんでるって」
「ぁ…………あぁっ!」
 恩田のカラダがぐらっと揺れて、その腰を支えるように男が掴んで。
 男の手の動きに合わせて、委員長の腰が少しずつ動いてるように見えた。近づくように、突き出すように。声は半泣きになって、切れ切れに続く。微かな悲鳴。いや、溜め息のような、そんな声。
 女がエロくなる時には、声に色が付くって、未経験ながら俺は初めて知った。目の前で、委員長が『女』に変わっていく。捨てられた仔犬が鳴くみたいな、恩田の切ない声で、頭の中がいっぱいになる。
 胸の鼓動が、チンコのズキズキと一緒になって。誰かに見られようが、ヘンタイだと思われようが、もうこの場でシゴくっきゃない。股間はそんくらい切羽詰まっていた。

 ゆっくりと恩田が動いた。一瞬、何が起きてるのか分からないくらいスローモーションで。
 ダンスでも踊るように、片足があがる。肩に置かれていた両腕が、男の首に巻き付いた。ミニスカからはみ出した尻の丸みは白く、軽く曲げた膝が男の太腿に寄り添う。
 啜り泣きの合間に、うわ言のように男の名を呼び続けて。男の手のリズムに合わせて、委員長の体も揺れる。くの字に曲がった白い足が、夕闇に浮かび上がる。
 こんなの不意打ちだ。
 じわっと先走りが漏れる感触に、俺は慌てた。さすがにパンツの中に射精するのは避けたい。
 チャックを下ろそうとして、愕然。
 目の前のエロい光景に心を奪われて、抱えているモノをすっかり忘れていた。さっきまでは、あんなに魅力的だと思っていた「抜き差しバッチリ(以下略)」のDVDが、足元に落ちる。
 チンコ出す前で良かったと思うべきか。
 振り向いた四つの目に、俺の頭は真っ白になった。





BACK NEXT TOP