囮捜査

――4



 男の視線は、縮れ毛に覆われた白い肌に定まっている。美和子は頑なに両腿を閉じているが、その先にある女の部分を見つめているようでもある。両脇に立つ男たちは、美脚の隙間に各々の足をこじ入れ、左右からゆっくりと開いていく。
 男は指先でピンと美和子の乳首を弾くと、上着の懐に手を入れた。ポケットから出された男の指は、ゼリー状のもので濡れている。やがて美和子の両足は拳二個分ほど開かれ、無防備に媚肉を晒した。その狭間に男の指が伸びる。
 指先は襞を分け入って潜り、前後に往復した。ぬるりとしたものが女の一番敏感な部分に、柔肉を湿らすように塗り付けられる。美和子が最初に感じたのは、息を吹きかけられたような涼しさだ。それは次第にムズムズした痒みを伴い、敏感な花芽や粘膜を間断なく刺激した。自らの意思をよそに、秘められた場所が熱さを増し、粘液で潤っていく。
 どうやら媚薬のようなものを塗り付けられたと気づくが、逃れる術はない。男たちは媚薬の効果を知り尽くしているようで、女の体をここぞとばかり執拗に嬲った。
 柔らかそうな双乳は形が変わるほど捏ねられ、白い肌には指が食いこんでいる。時折いたぶるように頂点の尖りを爪の先で弾かれて、その度に美和子は身をよじる。
 若い男の指先は、ぷくりと膨らんだ陰核をとらえた。美和子の肩がびくんと大きく波打つ。さらに奥へと指を進めると、しとどに濡れそぼる襞に触れた。先ほど塗った媚薬ゼリーとは違う、美和子自身の露が滴っている。男は満足げな表情を浮かべると、蕩けた花びらに指を浸して入り口を掻き回す。美和子の頬は、恥ずかしさと口惜しさで紅く染まった。
 痴漢は犯罪である。許すまじき事なのに、意に反して体が熱くなる。その事に、美和子は戸惑っていた。次第に熱を帯びていく頬には髪の毛が張りつき、額には汗の粒が浮く。

 い……や……助けて、誰か……高木く……。
 なんでこんな、ヘンな気持ちに……。
 この男たち、捕まえないと、いけないのに。
 やめて、そこはダメッ!
 あ、あふっ……ヤ……キモチい……いやぁぁぁ。

 わずかに残った刑事としての使命感と、美和子の女としての部分がせめぎあう。元はといえば抵抗する声を抑えるための口枷だったが、今は喘ぎ声を抑える結果になっているのが皮肉だった。
 男は、やわやわと誘うように収縮する秘唇に指を突き入れる。かすかな肉の抵抗の後、その場所はスルリと指を呑みこむと、嬉しそうに新たな蜜を零した。男の掌まで濡らす、おびただしい量である。
 美和子はボールギャグを噛みしめ、快感を堪えていた。気を緩めたら、すぐにも達しそうなほど、感覚が鋭敏になっている。男の指先は深く潜りこみ、女の“なか”を掻き回す。ざらついた内壁の感触を味わうように、指の腹で執拗に擦った。立っていられないほどの疼きで、美和子の下肢は小刻みに震えている。
 弄られている場所は、そこだけではない。胸の頂を捻る者、尻肉を撫で回す者。もはや、どの男の手でどこを弄られているか判らなくなるほど、美和子の意識は乱れていた。今いるのが電車の中であるとか、自分は刑事であるとか、覚えていなければならない大事なものが、輪郭を失って溶けていく。
 熱く熟れた突起は、また違う男の手で捏ねられる。輪を描いて撫で回し、ピンと弾く。とぷりと液体が溢れ、内腿を濡らした。

 やだ……イきたくない……の、に……。
 たすけ……て、たか……っ!

 しなやかな肢体が、わなないた。びくびくと体が揺れる。絶頂の震えは体をまさぐっている男達にも伝わり、彼らは皆一様に好色そうな笑みを漏らした。悔しさが涙となって、美和子の頬を流れ落ちる。
 杯戸駅が近づき、電車は地下へ潜った。車窓は明るい朝の陽射しから暗転し、車内を映し出す、ほの暗い鏡になる。口枷を嵌め、呆けた表情の女が映っていた。涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにして、乳首を摘まれている姿は、男達に嬲られるためにある玩具のようだ。
 なんてみっともないんだろう。おかしくて笑っちゃう。
 薄暗い車窓に映る自分の姿を見ながら、美和子はひとごとのように思った。笑ってみせたつもりだが、頬が少し歪んだだけだった。







BACK NEXT TOP