囮捜査

――5



 背後のドアが開き、美和子の耳にホームのアナウンスが届く。駅に到着しても、身動きは取れなかった。ふらつく体を、両脇から男達に抱えられているためだ。
 男達の愛撫は止まらない。媚薬の効果か、一度達しても美和子の体の奥深くは、疼いたままである。まさぐる男の指に、敏感に反応していた。繰り返し摘まれ刺激を与えられた乳首は固く立ち上がり、白い肌のてっぺんに生った紅い実のように色を濃くしている。
 美和子の体は、わずかに揺れていた。膨らんだ花芽を撫でる指の動きに合わせ、我知らず腰を押し付けている。足の間からは、くちゅりと水音が立つが、人のざわめきにかき消され気付く者もいない。
 停車中の扉越しには、隣のホームが覗ける。口枷をつけた女の姿や、はだけた胸元も、電車を待つ人々に見られているはずだが、男達は気にする様子も無かった。
 ぼんやりと煙るような瞳をして、美和子は息を荒げている。あと数段昇れば再び高みに達してしまうのを、ボールギャグを噛み締めて必死に耐えていた。
 扉が閉まり、電車が走り出す。“なか”を掻き回す指は二本に増やされ、ざらついた場所を擦り上げながら、浅く深くリズミカルに突き入れる。

 また、イク……イっちゃう。
 高木く……ん、どこ……いないの?

 絡みつく肉襞から、つと指を抜くと、さらりとした液体がこぼれ出る。男は深く指をこじ入れ、したたる肉洞に栓をした。
 ずぶりと奥まで穿たれ、体の芯を貫く痺れが走る。二本の指は肉襞を揺するように蠢いた。チリチリと炙られるような快感に、新鮮な空気を求めて、美和子は思わず顎を上げる。胸の双丘を弄っていた男は、それを見て両の突端を指先で押し潰した。
 女の喉から悲鳴に近い声がせり上がる。だが口枷に阻まれて、音にはならない。
 男の指はとどめのように肉芽をまさぐり、手荒く捏ねる。美和子は、ふわりと体が持ち上げられたような錯覚に陥った。濡れそぼった口は男の指をきゅうと締め上げ、そして弛緩する。男達が支えていなかったら、彼女はその場でくずおれていたかもしれない。膝はガクガクと震え、達したショックのせいか、大粒の涙がこぼれた。
 未だ余韻を残して、女の蕩けた肉はひくつき、痙攣のような動きをしている。その感触に男はほくそ笑み、空いた手でズボンのチャックを下ろす。猛り立つ一物を苦労して取り出すと、エラの張った剛直を片手で軽くしごく。尻に擦り付けられている肉茎からは、先走りの汁が漏れているようで、柔肌の狭間でずるりと滑った。
 体液が塗り付けられる気味悪さに、美和子は背筋を震わせる。涙の幕で滲んだ視界でも、前に立つ男の肉塊が、そそり立っているのが見える。人いきれの中で、牡の匂いを嗅いだような気がした。
 犯されるのだ。
 見回せば、初老の男も傍らの男も、それぞれのモノをしごき立てている。美和子には、彼らに代わる代わる犯され、白濁で汚される姿が想像できた。

 高木君……ごめ……ごめん、ね。

 美和子は胸のうちで、ごめんねと繰り返した。恋人への罪悪感が、心を苛んでいる。自らの浅はかさを呪い、彼女は悔しげに眉根を寄せた。
 尻の狭間から蜜を溜めた場所へと、細い指が伸びる。粘液を掬って、後ろのすぼまりを湿らせる。美和子は両目を見開いた。思いもよらない部分への責めに、本能的な慄きを覚える。排泄にしか使った事のない場所を、男は執拗に揉みほぐし、つぷりと指先を忍び入れた。未知の感覚に襲われ、全身が総毛立つ。
 別な男は、動揺する女の片足を膝裏から抱え上げ、足首からショーツを引き抜いた。縮れ毛の翳りの奥には、恥ずかしげもなく涎を垂らした裂け目が、ぱっくりと口を開けている。
 終点の東都駅が近づく。もはや犯されるばかりの有様に、美和子の顔は蒼ざめ色を失った。
 今や男達は押さえつけるだけで、女の体を嬲るのをやめていた。すぼまりを犯す指だけが、奥まで潜りこみ内壁をまさぐる。美和子が次第に感度を高めていくのを、皆それぞれに己のものをしごきながら、静かに見守っている。
 初めは違和感しか与えなかった指の動きが、徐々にぞくりとしたざわめきを運んでくる。その感覚は、男の塗った媚薬がもたらしたものなのか、それとも新たに目覚めた性感なのか。わからなくて、彼女はよりいっそう惑乱した。
 トクントクンと早まっていく自分の鼓動が聞こえる。性器とは到底思えない場所から、さざ波のような何かが湧き起こる。指が粘膜のある一点を探り当てると、美和子は目をみはり、びくんと体を強張らせた。
 こんなことで感じたくないという想いが強くある。だが、意に反して括約筋がきゅっとすぼまった。指を咥えこむように、離さぬように。
 恋人にも触れさせた事がないのに、ぞわぞわとした何かが背筋を這い上った。肉茎の動きを模して、指は強弱をつけ抜き差しする。その度に体はぶるりと震え、開かれた肉の狭間からは新しい滴が漏れた。
 内股をとろとろと蜜が伝う。動かずに見守るだけだった男達が、そこに指を伸ばし淫水を掬い取った。ぬめる指を美和子の眼前に突き出すと、舌でねぶって見せる。別な男は淫らな汁を女の乳首に塗り、涙で濡れた頬にも擦り付けて指先をぬぐった。

 ……クク……ククク……好きものだな、この女。

 美和子には、男達の嘲笑する声が聞こえた。彼女にだけ伝わる声だった。
 言いようの無い屈辱感が、心のどこかを壊していく。
 仕事熱心で勝気な佐藤警部補の姿は、そこになかった。捜査一課の同僚達が今の彼女を見たら、きっと別人だと言うだろう。
 正面に立つ男が、じわりと体を寄せた。十分に猛り、先走りを漏らし始めている肉茎を、潤った秘裂に添わせる。しこった肉芽と蜜をたたえた襞との間を、雁首が嬲るように往復した。
 すぼまりを探っていた指が、するりと抜かれる。代わりに背後からも、熱い肉槍が宛がわれた。女装した男がスカートをまくり上げ、肉茎を押し付けている様は、女が女を犯しているようで倒錯的に見える。ようやく口を閉じたセピア色の蕾は、怯えるようにひくひくと震えた。
 恋人にしか許していない場所を、他の男の白濁で穢される。
 未だ男を迎え入れた事がない処女地を、抉られる。
 諦めと恐怖と怯えと。
 痴漢達の動きを見逃すまいと、気丈に開いていた双眸を、彼女は力無く閉じた。

 高木……くん、どこ……たすけ、て。

 美和子の悲痛な叫びが届いたかのように、高木刑事の胸ポケットで携帯が振動した。



To be continued.




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