立ち止まっているの あんたが熱くて太いもので あたしの体の芯に穴を穿ってから あたしの心はスースーと 風が通り抜けるままなんだ 仲間との賑やかな宴も 騒々しい楽器の音も この穴を埋められなくて あたしはとっても困ってる お酒を飲んでも 煙草をすっても いい映画をみても 穴からじわじわと零れてきて 漏れ続けているような 気がするんだ あたしは忘れたくないんだ ずっとずっと 舌をからめる 深いキスも 冷たくて甘くて 喉に染みこんだ オレンジジュースの味も 唇の端にこびりついた 青臭い匂いも “ハジメテ”を 全部あんたが持っていっちゃったから 黙ってあたしの目の前から消えちゃったから 忘れることができないんだ だからあたしは あんたがあたしの心をさらっていった 生暖かい肌にまとわりつくような あの夏の夜の空気を忘れない ワンピースの裾に散った ひまわりの花も どうしてだか 瞼に焼きついて 離れないんだ 驚いた拍子に 手から落としてしまった 荷物のバサリとする音まで この耳はおぼえているんだから あんたの代わりはどこにもいない あんたが穿った穴は あんたじゃなくちゃ塞げないんだ 他のものじゃダメだってことが 最近やっとわかったんだ 今日も心の中が スースーとして ときどき思い出させるように 穿たれた穴が 疼いてる ねえ だから 教えてよ あんたがどうして目の前から消えちゃったのか 何もいわずに消えちゃったのか 教えてよ それが聞けないから だから あたしは こうして 立ち止まっているの |