好きだけどサヨナラ
『ずっと前から、わたし……上条恭介くんのこと、お慕いしてましたの』
宣戦布告のような仁美の言葉が、ぐるぐると、美樹さやかの脳裏を駆け巡っていた。
あの時、仁美に負けないくらい恭介が好きだと言えたら、どんなに良かっただろう。
ずっとずっと、小さな頃から恭介だけを見てきた。白い指先が奏でるバイオリンの音色を聴いて、音楽の豊かさを知ったのだ。転がるようなトリルは耳をくすぐり、激しくクレッシェンドする旋律が心を貫く。いつまでも恭介が弾くバイオリンを聴いていたかった。
さやかの願いは叶ったのだ。自らの命をかけた奇跡によって。
それだけを望んでた。何も不足は無いじゃない。
心の中でそう呟いてみても、願いが叶えられ魔法少女になった時のような高揚感は、微塵も感じられなかった。
巴マミの言葉が蘇る。
『美樹さん、あなたは、彼に夢を叶えて欲しいの?
それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?』
同じようでも全然ちがう。優しかった先輩が突きつけた質問の意味を、理解していた……はずだった。恭介の夢が叶えられれば、それで良かった。恩人になるつもりなんて、なかった。
なのに、楽しそうに話す恭介と仁美を見ると、心がざわめく。叫び出しそうになる。
あの時、仁美を助けなければ良かったと、正義の味方にあるまじき思いが溢れてしまう。
川沿いのベンチに座った恭介は、松葉杖を傍らに置き、仁美の話に耳を傾けている。
『わたし、明日の放課後に上条くんに告白します。自分の気持ちに嘘はつきたくないんですの』
昨日、仁美はそう言っていた。
どんな言葉で、それを告げるのだろう。離れた場所でひっそりと彼らを見守っている、さやかには、二人の会話は聞こえない。
隣りで話しかける仁美の、真摯な面持ち。うっすらと頬を染めて、恥じらう仕草。
恭介が少し照れたような、驚いた表情をした。
川面は夕陽に染まり、オレンジ色にきらめいていた。見つめあう二人を見て、仁美の告白が成功したのだと、わかった。
恋は早い者勝ち。先に告白したほうが勝者だと言ったのは、誰だったっけ。
魔法少女である自分は、そのゲームに参加する事すらできない。ソウルジェムに生かされているだけの、ゾンビなのだから。
これ以上、二人を見届けることなんて、できやしない。さやかは、いつの間にか駈け出していた。
誰よりも好きな人に、自分の想いを告げることもできない。抜け殻になったカタチだけの肉体を、自室のベッドの中で抱きしめる。
「今日はパトロールに出かけないのかい? 美樹さやか」
愛らしい姿をした白い魔獣が、尻尾を揺らしてすり寄ってくる。
「今は私に話しかけないでよ!」
腹立ちまぎれにクッションを投げつける。
自分は、正義の味方という名前の傀儡なのだ。この世界の何を守ればいいのか、さやかにはわからなくなっていた。
「やれやれ。僕はこれでも君を心配しているんだよ。気になっているんだろう? 君の願いによって癒した、上条恭介のことが」
言い返そうとして口を開きかけた時、ふいに、頭の中でバイオリンの音色が鳴り響いた。
さやかの脳裏には、白い指先が弦を滑る様が映し出された。
恭介だ。恭介がパガニーニを弾いている。
一瞬、目の前に恭介が現れて演奏している錯覚に陥りそうになったが、すぐに違うとわかった。
彼がいるのは、子どもの頃に何度か遊びにいった事がある、恭介の部屋だった。ゆったりしたソファに座って、バイオリンを奏でていた。
「今の……なに?」
「気になって、魔法少女としての仕事に身が入らないと困るからね。上条恭介の様子を、直接君の頭の中に届けているんだ。これもアフターフォローの一環だよ」
キュゥべえの言葉は聞こえていたけれど、さやかの耳はバイオリンの音色を追っていた。いつまでも聴き惚れていたい、そんな甘く切ない旋律だった。
恭介の手に音楽を取り戻せて、良かった。ほんとうに……。
さやかは悩んでいた事を束の間忘れ、幸福感に包まれる。
微かな余韻を残して、演奏が終わった。バイオリンをおろした恭介が、柔らかく微笑んだ。目の前に座って拍手を送っている、たった一人の観客に向かって。
「すばらしい演奏でしたわ。聴衆が私ひとりなんて、もったいないくらい」
「志筑さんに聴いてもらうのは、はじめてだったかな」
仁美はコクリと頷くと、恭介の左手にそっと触れた。
「治って、本当によかったですわ」
触れられた場所から熱がうつったように、恭介の顔が赤くなる。
「これからはコンクールにも出場したいし、もっともっと練習しないとね」
照れたように言う恭介を、仁美は真剣な眼差しで見つめた。
「私、おたずねしたいことがありましたの。上条くんは美樹さやかさんのこと、どう思っていらっしゃいますの?」
「うーん、さやかとは、幼馴染みだからね。ともだち……いや腐れ縁、かな」
「そう……ですの」
恭介の答えに、仁美の思い詰めた表情が、ふっと和らいだ。
「遅くまで引きとめちゃったね。送って行こう」
立ち上がろうとした恭介の体が、ぐらりと揺れる。その体を抱きとめるように、仁美の両腕が支えた。
「まだ左足が思い通りにならなくて。ごめん、志筑さ……」
「仁美って呼んでくださって、かまいませんわ」
頬が触れ合うほど、二人の距離が近い。どちらからともなく唇が重なった。
幼馴染み、ともだち、腐れ縁。
命をかけて癒しを願った相手にとって、自分の存在はその程度でしかなかったのだ。
さやかの体が小刻みに震える。
「キュゥべえ、やめて……もうやめてよ」
「これが、君が願った世界だよ。美樹さやか」
「さっきは送ろうなんて言ったけど、本当は仁美ちゃんのこと、このまま帰したくないって思ってる」
「私も同じ気持ちですわ。今日は……遅くなっても大丈夫ですの」
少し早口になった恭介に、仁美が囁くように答えると、二人はもつれ合いながらソファの上に倒れこんだ。
唇を吸い合う湿った音が室内に響き、仁美が甘えるような吐息を漏らした。恭介の指先が、少女の首元にある紅いリボンをほどき、続けてもどかしくブラウスのフックを外していく。
衣服がこすれ合い、ソファが軋む。仁美が時々小さく喘ぐと、それに自信を得たように恭介の手が動いて、仁美の素肌を少しずつあらわにする。
恭介はきっと緊張してる。音楽バカのあいつが、女の子の扱いなんて知ってるわけないもの。
恭介のたどたどしい慌てぶりを見て、さやかは微笑ましささえ感じていた。
目を瞑っても耳を塞いでも、二人の様子は残酷なほどリアルに、さやかの元に届く。白い魔獣は中継をやめるつもりなど、一向に無いようだ。
見たくないのに、ずっと見ていたいような。さやか自身にも自分の気持ちがわからなくなりつつあった。なぜなら、恭介が仁美にしている事は、ずっと自分がして欲しいと願っていた事だったから。
恭介の唇は温かいだろうか。ずっとキスして息苦しくなったりしない?
抱きしめられたい、仁美みたいに。
恭介のそばにいるのは、なんで仁美なんだろう。
なんでなんでなんで。
後悔なんてあるわけない。魔法少女なんだから、正義の味方なんだから。
恭介の肌に触れたいよ。触れてほしい。
暗い部屋の中で、さやかの瞳は何も映さず、ぽっかりと中空を見つめている。ただ恭介と仁美の営みだけが、さやかの心を占めている。傍らで白い魔獣がその様子を見守っている事など、意に介していなかった。
ダークグレーのソファに、乳白色の下着と紺のハイソックスだけを身につけた仁美が横たわっている。青みがかった白い肌が、柔らかな光を放ったようにも見えて、恭介はゴクリと唾を飲み込んだ。
「あの、こんなこと、はじめてで、よくわからなくて」
「私も、ですわ。上条くんの好きなようにしてくださって……いいんですの」
仁美は目を伏せ、恥じらうように身をよじる。
「きれいだよ、仁美ちゃん」
少し骨ばった恭介の背中が、仁美に覆いかぶさる。両手でブラを引き下ろすと、小ぶりだが形の良い乳房がまろび出た。最初こわれものを扱うようだった恭介の手つきは、次第に大胆になり、弾力のある胸をこねまわす。
仁美の息遣いが荒い。白い肌は興奮のためか、ほんのり赤みを帯び、恭介の掌で撫で回された乳首が、固くしこってツンと上を向いた。恭介の唇が、その先端にむしゃぶりつき、強く吸う。
「んあッ……や……上条く……ぁあああッ」
「できれば僕のことも、名前で呼んでくれないかな?」
仁美の反応に気をよくして、恭介は少しだけ落ち着きを取り戻していた。弦をピチカートで弾く要領で感度のよい乳首を嬲ると、仁美は切なそうに啼く。汗ばんだ掌で、くびれたウエストから体に似合わず大きめのヒップを撫で回し、白い太腿を割り開いていく。上品なレースで飾られた薄いショーツの上からワレメを指でなぞると、そこはじっとりと湿り気を帯び、中のカタチまでうっすらと透けて見えた。
恭介の怒張は、今までにないほど昂り、その存在を主張している。慌ただしくズボンと一緒に下着を脱ぐと、脈打ち、先走り汁を漏らした屹立が姿を現す。
入院中は性欲を感じる事も少なくなっていた。奇跡のように左手が治り、退院し復学してすぐ、仁美から告白を受けた。これから自分の運命は好転していくのだ。恭介には、目の前の少女と繋がり愛する事が、自身の明るい未来へと繋がっているように思えた。
仁美のショーツに手をかけ、一気にひきずり下ろす。膝を抱えあげ、秘められた場所をあらわにする。柔らかそうな茂みの下では、唇がひくつき、透明な滴を垂らしていた。
「イヤ、見ないで……恭介くん……」
仁美の拒否の言葉とは裏腹に、恭介の視線はその場所に釘付けになっている。二本の指でワレメを開くと、小さな肉芽が顔を出す。しこって赤みを帯びた肉芽を撫で回し、押し潰す。仁美の腰がビクビクと震えた。
恭介ってばいやらしい。舞い上がっちゃって、もうすっかり仁美に夢中なんだね。
幼馴染みだからこそ、さやかには恭介の気持ちが手に取るようにわかった。
胸の大きさなら、仁美に負けないんだけどな。
さやかは、むくりと起き上がると、制服を無造作に脱ぎ捨てる。淡い水色の下着姿になって、ベッドに身を横たえた。ブラの中に手を差し入れると、もう乳首は固く尖っていた。
自分で自分を慰める方法――オナニーのやり方は、知っていた。胸を弄ったり、ワレメにある粒を撫でまわしたりするのだ。絶頂という未知の感覚にはほど遠かったが、それをすれば少しずつ気持ち良くなっていくと、経験則で理解している。アソコに指を入れるのは、まだ怖くてできなかった。
仁美の喘ぎ声が、さやかの頭の中で反響する。最初は耳障りだと思っていた、仁美のいつもより高く甘ったるい声が、さやかの体の中――特に下腹部のあたりを、じわりと熱くした。
「やれやれ。地球人の反応というのは、本当に不思議だね。僕には理解できないよ」
耳元で白い魔獣の声がする。
「そんなことで満足できるのかい? 美樹さやか」
キュゥべえの存在をすっかり忘れていた事に、さやかは愕然とした。
「あ……あんたに関係ないでしょ。今すぐ出てってよ!」
「僕は君たち魔法少女のパートナーだよ。思春期の君たちが、異性を求めて性欲を増大させる事も、よく知っている。今の君のように、相手がいなくても生殖のための潤滑液を排出するのは、未だに理解不能だけどね。だって無駄な行為じゃないか」
「…………黙ってよ」
「服を着ていない状態を隠す必要はないよ。魔法少女のそういう姿を、僕は見慣れているからね。そう、たとえば巴マミも」
「マミ……さん?」
「魔女のもたらすグリーフシードが君たちのソウルジェムを浄化する。これはわかっているよね? だが、魔法少女でいる事は、心身ともに負担のかかる状態なんだ。そのストレスは多くの場合、君たちの性欲を通常以上に昂進させる。膨れ上がった性欲は、開放してやらないと危険なんだよ」
キュゥべえは何を言おうとしているのだろう。白い魔獣の言葉を、額面通りに受け取ってはいけないと、警戒心が湧く。
「巴マミの時も、僕はその手伝いをした。だってパートナーだからね。さあ、もう一度聞くよ。美樹さやか、君はそんなことで満足できるのかい?」
マミの名前を聞けば、さやかも平静ではいられなくなる。憧れであり目標であったひと。
キュゥべえが手伝っていたって、一体どんな風に……。
「僕なら君の望むようにしてあげられるよ」
キュゥべえの紅い瞳がチカリと光る。垂れ下がった耳のような部分が別個の生き物のように蠢いて、さやかの両胸をとらえ、器用に揉みしだいた。丸い金色の輪が転がり落ち、さやかの乳首に触れると、小さな指輪ぐらいまで大きさを縮め、あつらえたように胸の蕾にピタリと嵌まった。圧力をかけて締め上げ、不規則な振動を与える。
「わ……やめ……あ、あああああッ」
さやかの体に、今まで味わった事のない鮮烈な快感が走った。根元を絞りあげられた乳首は充血し赤みを帯びている。普通なら痛みを感じるはずだが、痛覚はなぜか軽減され、むず痒いような疼きが増していくのだ。じわりと股間が潤む。
「無理強いするつもりはないよ。君がイヤならやめておこう」
不意に刺激が止む。胸のリングが緩み、元の形状に戻ろうとしていた。さやかの体の中には快感の火種が燻っている。先ほどまで締め上げられていた乳首は、じぃんと痺れ、より強い刺激を欲していた。
頭の中では、仁美の嬌声が響く。恭介に甘え媚びる声が、さやかに心の空洞を意識させた。
「やめ……ないで。手伝ってよ……キュゥべえ」
言うなり、胸のリングが再びさやかの乳首を拘束する。
「ひぃ……んんッ」
白い魔獣の尻尾は、細かに枝分かれした触手となって、素早くショーツを剥いでいく。
引き締まった下腹部に繋がるなだらかな丘には、くっきりとワレメが見えていた。秘められた場所を覆い隠すはずの下草は薄くまばらで、ほとんど無毛のように見える。同級生たちと違い、大人になりきっていないように見えることを、さやかはひそかに恥じていた。
「……なに……やぁ……ッ」
キュゥべぇの両耳から垂れ下がった触手が、魔法少女の両膝を掴み、秘められた場所を割り開く。興奮し潤った肉の裂け目は、開かれる時くちりと粘性の音がした。少女の両脚の間には白い魔獣がちょこんと座り、無機質な紅い瞳で、惜しげもなく晒された秘部を見つめている。
「ひゃんッ!」
胸のリングが新たな刺激を送り、さやかの腰が跳ねた。肉襞から溢れた蜜は、窄まりに向かって流れ、シーツに小さな染みを作った。魔獣の尻尾から伸びた触手が、ワレメの上部にある小さな突起を包むように捕らえる。鋭敏な部分を責められて、さやかの引き締まった体が弓なりに反り返った。
「や……ダメ……んぁッ」
触手の先端が、肉の蕾をリズミカルに弾く。その度に、少女の体はガクガクと痙攣し、甘い喘ぎをあげる。
さやかの脳裏には、恭介に組み敷かれている仁美の姿がある。甲高い声を発しているのは、自分なのか。それとも仁美なのか。
カラダに与えられる絶え間ない刺激と、アタマに伝えられる絡み合う二人の有様。
目を瞑って快感に身を委ねれば、恭介に抱かれているのが自分であるかのような、錯覚すら生まれてくる。
「きょう……すけ……」
さやかの唇から、恋しい男の名がうわ言のように漏れる。
一度呟いた名前は、麻薬のように少女の四肢を犯していく。
恭介の指先が両の乳首を痛いほどの摘みあげ、下肢を開いて肉芽をその舌先で嬲っている。今のさやかを犯しているのは、そんな幻影だ。
好きな人の前で、裸身を余すところなく晒している恥ずかしさ。
「イヤ……みな……いで、きょ……す……んんんッ!」
再び、その名前を呼べば、さやかの肌には甘い痺れが満ちる。
白い鞭のような触手が、ひときわ強く敏感な突起を締め上げる。肉芽の先端は充血のためか、熟れたザクロの実のように紅く膨れている。触手の鞭がうねり、紅い粒の頂点をピシリと打った。
「あ……や……イっちゃう……恭介……ぁあああああッ!」
甲高い声をあげて、あっけなく少女は絶頂に達する。体を波打たせながら、少女は何度も何度も、そこにはいない男の名を呟いた。
「んふッ……ぁんッ……はぁぁん……」
仁美の泣き出しそうな喘ぎ声が、恭介の耳には心地よかった。自分の指先が、目の前の少女をいやらしい姿に変えていく。コンサートホールのコンダクターのように。
脈打つ肉茎を握りしめ、白く張りつめた両腿の隙間に、膝を割り入れていく。
だが挿入は、恭介が予想していたほど容易ではなかった。仁美の濡れそぼった肉襞は滑りやすく、狭い入り口が侵入を阻んだ。何より思い通りに動かない左足のせいで、力が入りにくい。
恭介の顔に、焦りの色が見えた。
「あの……」
仁美は、恭介の首に両腕を巻きつけ、囁きかける。
「こんなことをして、はしたない女だと……思わないでほしいんですの」
「仁美……ちゃん?」
そのまま、くるりと体を入れ替えた。両脚を開き膝をついて、恭介の体に馬乗りになる。
「うまく……できるといいのですけど……」
華奢な指が、恭介の肉茎にそっと触れる。多分はじめて触れるであろう温かさ、硬さ、大きさに、一瞬驚いた表情をしたが、仁美は意を決したように目を瞑ると、肉茎を握り、ゆっくりと腰を下ろしていく。肉の狭間を通り、先端がぬかるみに埋まる。
なぜこんなに心が急いているのだろうと、仁美は考えていた。告白したその日に体を許すなど、今までの自分では想像もつかなかった。
だが、この機会を逃してはならないと、仁美の奥に眠る本能が囁き、また腰を沈めていく。
「あ……んん」
仁美は首を振り唇を噛んで、破瓜の痛みに耐えていた。その様子が男の嗜虐心をそそる。恭介はくびれた腰を引き寄せ、暴れる分身を宥めながら、仁美の中へと突き入れる。
「はぁぁぁんッ!」
ぐちゅりと、ぬかるみを掻き回す音がして、肉茎が根本まで埋まる。熱く湿った肉襞に包まれる未知の感覚に、少年は我を忘れた。
「ダメ、だ。我慢できない……仁美ちゃ……ごめんッ」
「恭……すけ……さ……ぁあんッ」
がむしゃらに突き上げる恭介の上で、仁美の白い裸身がうねり、形の良い乳房がゴムマリのように跳ねる。先ほどまでバイオリンの弦を滑っていた指先が、仁美の胸を掴み、柔肌に爪を食い込ませた。
花芯を擦り上げられる鈍い痛みに耐えきれず、体を折ると、仁美の脳裏に毎朝出会う友人の顔がよぎる。
その像を断ち切るように首を振ると、額に汗を浮かべた少年を見つめ、微笑みかける。
「だい……す……き……」
そしてそのまま恭介の唇を塞ぐ。
「ん……んんんんッ!」
肉の楔がいちだんと深く少女の体を抉り、少年はとめどなく熱い迸りを叩きつけた。
体を離しても、繋がっていた場所は引き攣るように痛み、まだ恭介の分身がカラダの中に残っているような気がする。だが、その感覚も愛された証なのだ。
そんな仁美の髪を撫でながら、恭介は語りかける。性急にこんな関係になってしまったことを、避妊をする余裕もなかったことを詫びた。
「いいんですの。何も後悔はしていませんわ」
こうなるように、自分が強く望んだのだと、仁美は自覚していた。
「すっかり遅くなったね。今度こそ、君を送らなくちゃ」
「ええ……でも……まだ、立ち上がれませんの……」
恥ずかしそうに呟く少女を、恭介は笑いながら抱き締める。愛しい男の腕に包まれて、仁美は心の中だけでそっと囁く。
美樹さん、ごめんなさい……と。
快感の余韻からか、さやかは両足をしどけなく投げ出して荒い息をつく。幼く見える恥丘とは対照的に、そこから覗く肉の秘裂は潤み、蜜でてらてらと光っている。
その場所にもぞりと白いモノが蠢いた。
白い魔獣の尻尾に繋がっているソレは、先ほど肉芽をなぶっていた触手と違い、芋虫のような節くれだった形状をしている。人の指より太く、標準的な男性器より細い。
芋虫状の触手は、それ自体意志ある生き物のように濡れた溝を這っていく。
秘処に与えられた新しい刺激に、さやかは薄目を開け、ゆっくりと体を起こした。
自分の体の向こうに見えるキュゥべぇの紅い瞳。そこから伸びた白っぽく半透明な触手が、芋虫のような鎌首をもたげ、さやかの蜜が溢れる秘唇へ潜りこもうと狙いを定めている。
「いやぁあああああああッ!」
少女が絶叫する。
四つん這いになり、気味の悪い触手から逃げ出そうと試みる。
キュゥべぇの両耳から伸びた触手が、さやかの両手首に巻きつき、背後から拘束する。
「僕なら君の望むようにしてあげられるよ」
いつもと変わらぬ調子の魔獣の言葉が、暗くなった部屋で虚ろに響く。
イヤだ。こんなことは望んでいない、決して。
首を振り抗うさやかの姿が、部屋の鏡に映った。両腕を後ろに引っ張られ、ベッドに跪いて引き締まった尻を突き出している魔法少女の姿が。膨らんだ胸の頂きには、魔獣の耳にあった金のリングが収まり、隷従の証のように鈍く光っている。
リングが小刻みに振動すると、さやかの背を新たな快感が這いのぼった。太腿にとろりと蜜が垂れ、それに反応して芋虫状の触手が蠢く。触手は表面に愛液をまぶすように、さやかの股間をのたうち、肉の狭間を上下に往復する。
「ヤダ……やめ……て……誰か……タスケ………………」
ちゅぷりという湿った音と共に、触手の先が濡れそぼった秘唇を犯す。
「ひッ!」
触手はゆっくりと抜き差しを繰り返して律動する。少女の淫汁をまとった芋虫は、花芯を出入りするたび、嬉しそうにその表面を震わせて、少しずつ太さと硬度を増していく。
「……イヤぁ………ダメェ………」
「苦痛は無いはずだよ。調整しているからね」
気味の悪い生き物に犯されているのに、じわりじわりと下腹部が熱くなる。何かが背筋を這いのぼり、頭の芯まで蕩けさせていく。その事が、さやかをいっそう惑乱させた。
「ぁああ………………イヤなのォ………んんんッ!」
ビクンビクンと少女の体が仰け反り、唇から溜め息のような喘ぎが漏れる。
「痛みを感じないのは、君自身の癒しの力のせいでもあるんだよ。美樹さやか」
キュゥべぇの言葉が、どこか遠くから聞こえる。
美樹さやか。そう、自分はそんな名前だったっけ。
ずぷり、ぐちゅり。いやらしい音を響かせて、体内深く触手が埋め込まれる。
膨れあがる快感を追いかけるように、少女の腰が動く。
「はぁッ………………ぁあん」
魔女や使い魔と戦っても痛くないのは、こんな芋虫に犯されて気持ちイイのは、自分が魔法少女だから。ダカラダカラダカラ。
少女の頬に熱いものが伝う。
さやかの脳裏には、幸せそうに裸身を寄り添わせ、睦みあう恭介と仁美の姿が映し出されている。
指先を絡め、キスを繰り返す二人。
「あ………ぁあああああんっ!」
白い鞭のような触手が、さやかの敏感な肉芽に巻きつき、快感を後押しする。秘唇を犯しているのとは別の触手が蠢き、新たな処女地、少女の窄まりへと潜り込んだ。
「………ひぃッ!!………………イヤぁぁぁぁ!!!」
恭介と自分は、こんなにも遠い。こんなにも隔たっている。
こんな体で抱きしめてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ……。
さやかの瞳に新たな涙が盛り上がり、零れ落ちていく。
前後の穴を犯す芋虫たちは、互いにリズミカルに動き、少女の胎内を掻き乱す。蜜壺の入口は溢れる愛液で白く泡立っていた。
「………ぁあん…………ぁふッ…………ヤ…………………ンンンンッ!!」
ひときわ甲高く甘い声を放ち、少女の体は力を失う。
魔獣の拘束を解かれ、ベッドに横たわったその横顔には、絶望の色があった。
さやかの唇が小さく動き、何かを呟いた。
暗闇の中でその言葉を聞いたのは、毛づくろいをするように丁寧に、尻尾にこびりついた少女の愛液を舐めとっている、白い魔獣だけだったかもしれない。
「サヨナラ、恭介」
さやかの言葉に反応して、机の上に置かれたソウルジェムが青黒く淀む。
キュゥべぇはそれを視認すると、部屋の隅から姿を消し、次の瞬間、暁美ほむらの部屋へ現れる。
「美樹さやかの消耗が予想以上に早い。魔力を使うだけでなく、彼女自身が呪いを生み始めた」
Fin.
初出「魔法少女まどか☆マギカでエロパロ3」QBさんのアフターフォロー さやか編