慣れ親しんだ物が入ってくる。私は声一つ上げない。
 勝手に私の粘膜がお義兄ちゃんを歓迎し、もてなした。中で喜ぶお義兄ちゃん。その感触が、妙に生々しかった。
「いっ…良いよ」
 情け無い声を上げて、また、1,090回目のキスをする。
 入れられながらのキスは、また違った感覚があり、その密着感に陶酔する。
 私はお義兄ちゃんの背に腕と足を回し、ぎゅっとしがみ付いた。お義兄ちゃんの呻き声が聞こえる。それと同時に、もっと入って来ようと、舌とペニスが、私の上下の口にキスをした。

 唇を舐められ、唾を入れられる。それを私が舌で弄ぶと、お義兄ちゃんは深い満足の溜息を漏らし、何度も何度もそれを繰り返させ、私の胃に納めさせる。
 舌を引き出され、それを吸われ、舐められる。
 大して上手くも無い愛撫が、私に異常な快感をもたらした。私は倒錯感に打ち震え、お義兄ちゃんにしがみ付いて弄ばれる。
 お義兄ちゃんはそんな私を見ながら、うっとりと、私の粘膜を遊び、子供をあやすようにして私の頭を撫でた。
 ハァハァと息を荒げ、好きなように私の奥を知って行く。打ち据えられる性器が、今日は何だかとても滑稽に見えた。

 お義兄ちゃんが私の足を開く。そして、そこを見る。私は余りの羞恥心に鳥肌を立たせた。
「あぅぅ…」
 それでも私は抵抗できない。見れるだけ見られ、触れるだけ触られ、突けるだけ突かれ、遊べるだけ遊ばれた。
「あぁっ、んふぁ…や、ぁ」
 そんな私の姿を満足げに眺めながら、単調なピストン運動で私を追い込もうとするお義兄ちゃん。異常なシチュエーションが、それでも私を追い込んでいった。
「らっ…だ、め、…あぁぁ」
 情け無い声が出て、その声を聞いたお義兄ちゃんがより硬くなり、熱くなる。その厭らしさが、余計に私を興奮させて、勝手に収縮し、体を痙攣させる。

 快感に飲まれそうになった瞬間、お義兄ちゃんは私のクリトリスの皮を乱暴に剥いた。
「ひぃぃーっ!?」
 どこぞの馬の骨に開発され尽くした私の体は、私を困惑させても、私の自由にはなろうとしない。苦痛があっても、それはセックスに都合の良いように反応し、私を快楽の園へ導いて行く。
 急激な刺激が、また、お義兄ちゃんを締め付けさせる。その感覚が欲しいのか、お義兄ちゃんは何度も何度もクリトリスを揉み込んだ。
「いっ…良いのか? 良いんだろ? うぉっ…」
 興奮しきった声が私の耳を愛撫する。それが、私の意図と無関係に、私の体を快感の海に放り投げる。

 そして、1,091回目のキスが、私を絶頂へ持ち上げた。
「むぁぁ…っ、あ…ぁっ…」
 私の体が痙攣し、目の前にはいくつもの閃光が舞い散る。それと同時に、お義兄ちゃんも絶頂感に打ち震え、私の体にがっちりとしがみ付いた。
「うっ…」
 と小さく呻くと、私の中に放っていった…。


*


 情事の後、後処理を済ませた私は、喪服を調えて、芝の上に寝転んでいた。その隣で、お義兄ちゃんも。
「お姉ちゃんがね、美久の事、凄く可愛い、可愛くてしょうがないって、そう言ってたよ」
 デリカシーの無い人は、セックスが巧くない。思いの他、お義兄ちゃんはセックスが巧くなくて、私は少しほっとした。
 お義兄ちゃんは、そんな私の頭を撫でると、フッと笑った。
 一途な私の思いが、いつだって私自身を苦しめる。それが消えて欲しくて、消えろ、消えろ、と何度も願いを込めたのは、嘘だ。
 嘘の願い事が叶うワケも無い。

 私は目を瞑るお義兄ちゃんの口に、自分の口を寄せた。
 私は何度、この瞬間を夢見たろう。
 そして消える。一瞬で立ち現われては、こちらを見ずに消えていく。
 セカンドキス、サードキス、フォースキス、フィフスキス…。どこまで無意味な名前を連ねても、ファーストキスは失われたまま。
 n回目のキスは、名前を付けてはいけません。


――fin.


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